平成ノ世

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鷹志下重工業と言えば、日本で知らないものはいないほど、大きな企業だ。 重化学工業にとてつもなく長けており、グループ内にはメガバンクと言われる都市銀行を所有し、日本のみならず世界的にもかなりの地位にある企業だ。 鷹志下重工業は、鷹志下グループの傘下企業であったが、連結決算の3分の1を担っており、その資本金は3,000億を越えるほどだった。 日本の経済を牽引しているといっても過言ではないだろう。 美優の勤める会社も、日本で言えばそこそこ大きな企業であり、この大不況の中でも粘り強く業績を延ばしつつあった。 当然、鷹志下重工業との取引は何らかの形では、繋がっていたが、役員からのオファーとは、一体どう言うことなのだろうか。 美優は営業職ではなかったし、ましてや営業だったとしても、鷹志下重工業との商談では末端の社員との会話が殆どである。 仮に、今、目の前にいる管理職の上司が商談に行ったところで、それは同じことだ。 同等レベルの管理職には会えたとしても、役員には到底会えるものではない。 それは、企業として当然のことであって、何も鷹志下重工業に限った話ではないわけだが。 それが何故、営業職でも、管理職でもない美優が名指し指名なのか、よく理解が出来なかった。 確かに、営業職ではなくても、商談の場に同席する場合もある。 美優も何度か鷹志下重工業との商談に足を運んだことがあった。 しかし、一度たりとも役員はおろか、管理職と言う立場の人間には会ったことがない。 一体どこで、彼女の名前を知ったのだろうか。
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