鼻孔の記憶はタブー

7/14
前へ
/740ページ
次へ
「熱いから気をつけてね」と神原喜代美は湯呑みを熱そうに慎重に持ってきた。 湯呑みからは湯気が出ていた。 「一人じゃ飲めないだろうから私が飲ませてあげる。自分でフーフーして」 オレは火傷しないように息をかけて湯を冷ます。 もう少し冷したかったが、神原喜代美が口の中にコーヒーを入れてきた。 水分が口に入ると渇いた砂が水を吸収するようにコーヒーが歯茎に浸み渡った。 ジャリっと口の中でいった。 固い何かが口の中で踊った。 コーヒーが粉っぽかった……。 オレは神原喜代美の目を見た。 「気付いた…?」
/740ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3599人が本棚に入れています
本棚に追加