その過去にわななき、狼狽する

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オレが神原喜代美の兄に聞くとカガワはあぁと言いながら下を向き、浮かれながら喋るサトシが黙った。 オレはまずいことを聞いたのかと思ったら神原喜代美の兄が、まぁいいじゃないか…と言い出した。 「オヤジがいつ帰ってくるかわからないから、簡単に説明するよ」 オレはその緊迫した空気に唾を飲み込んだ。 「オヤジはハンシュウに来る前、日本のT県で浄水器を扱う会社を経営していた。まぁ簡単に言えば、粗悪な浄水器を高値で売る詐偽会社だよ。たいして浄水もしていない浄水器を口一つで言いくるめて買わせるんだ。その当時、浄水器など売ってる奴もいなかったから、買う側も比較することが出来なかったんだろうね。蛇口をひねれば安全な水が出てくると考えていた時代に売り上げを伸ばしたんだからたいしたもんだよ」 オレは会話の行方が分からずそのままじっと聞いた
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