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一息ついた一同は、レインへと視線を向ける。
視線を浴びた彼は、カップを下げてユティへと視線を向けた。
「ユティ」
「……はい」
「僕は君が僕と旅に出る、って言うなら止めないよ。一度拒まれてちょっと傷付いたけど君から差し出された手には嬉しかったし、君が、決めたことなら僕は何も言うことない……君のその決断、嫌いじゃないよ」
「レイン」
同行を許されたことに喜ぶユティへ、レインは「でもね」と続ける。
「それは、僕個人の意見だ。僕と旅をしてくれるのは君だけじゃないよ」
「あ……」
「そーそ、レインくんはオレが巻き込むって約束したもんなぁ?」
床に胡座をかくゼオンがそう告げレインへと顔を向ければ、「そんな話もしたね」と頷きが返った。
「マルシェも! お兄ちゃんと旅するです!」
レインの隣に腰を下ろしていたマルシェが彼の腕を掴んで揺らす。
「うん、マルシェの街へ行くんだったもんね」
「はいです、約束です!」
嬉しそうに笑うマルシェの頭を撫でて、「これからのことを決めようよ」と告げた。
それからアーネへと目を向ける。
「まずは、アーネをリュクリナに帰してあげなきゃ。巻き込むのは──」
「レイン、あたしは帰らないよ!」
「え?」
「リューネに会えてないんだ。あたしは、妹と一緒じゃなきゃ帰らない。リューネを助け出してやらなきゃ!」
彼女の妹だけは、連れ戻すことが出来なかったのだ。
その事実に、誰よりも悔しい想いをしているのは、実姉のアーネだ。
大事な妹がどんな目に遭っているか、そんな想いを引き摺ったまま、おめおめと故郷の地を踏むことは彼女には出来なかった。
「そうだね、妹さん……まだ、城に居るのかな?」
「どうだろう……なぁ、ユティ。あんた、魔女なんだろ?」
「そ、う、ですね」
「だったら、妹の、リューネの魔法量を探知出来ないかい? 魔女ってのは、そう言うことが出来るんだろ?」
「え……」
「ふふ」
しどろもどろとするユティに詰め寄るアーネの耳に嘲笑めいた声が聞こえ、振り返ればミスティーアがクスクス笑っていて。
「……何が、可笑しいんだい?」
「いえ、ねぇ? そんな"役立たずな魔女"に頼む姿が面白かったものですから、つい」
「は?」
「魔法量探知でしたら、ワタクシに頼みなさい、人間。レインのよしみです、特別にやってあげてもよろしくてよ?」
不適に笑うミスティーアの申し出に、アーネは嫌そうに表情を歪めた。
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