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レインは村人に見つからないように、裏道を通りながら山への通り道へ向かう。
「(うん……このままなら、行きは誰にも会わないみたいだ)」
こんなに天気が良いのに、誰かに会ったら、と思うとレインの心は沈みそうだ。
もう少しで村の出口、山への入り口が見えてレインは駆け出す。
「、痛っ」
ゴツ、っと小さな石が額に当たり、レインは思わず足を止めた。
投石……と当たった石を見て固まるレインの背中に、それがきっかけのように次々に固い小さな感触が当たる。
「バケモノー!」
「バケモノレインが出たぞー!」
村の子供たち数人が、レインに向かって次々に投石を始める。
レインは頭を守るように腕を翳し、俯きながら出口に歩き出すが彼らの投石と蔑みの嵐は止まらない。
「バケモノから生まれたバケモノ!」
「村から出てけ!」
「魔女なんて村にいるから、余所者が変な目で村のこと見るんだ!」
「バケモノレイン!」
「死んじゃえ!!」
罵倒の数々に耐えながら、レインは歯を噛み締める。
「(母さんのお陰で……みんなは、平和に暮らせてるんじゃないか……!)」
石を防ぎながら、出口に足を踏み出すのと「こら、やめなさい」と言う老人の声が響き投石が止んだのは同時だった。
見なくてもわかる、レインは顔を向けずに出ていこうとする。
「待ちなさい、レインや」
「……何、ですか……」
レインは目だけを向けると、村長が子供たちの前に出てレインを見据えていた。
家からは村の大人たちが顔を出し、レインを見て嫌そうに顔を歪める。
しゃがれた声を出すシーブ村長の言葉を待った。
「お前はこの村の者なのだから、堂々と歩きなさい……お前がこそこそするから、子供たちが面白がるのだぞ」
「……そうですか、気をつけます」
レインは無表情で頭を下げて、今度こそ山へ向かう。
レインの背中が見えるままに、村人たちはこそこそ話し始めた。
「村長! あんなバケモノ、村の者なんかじゃないよ!」
「そうです、村長。魔女なんてこの村には不要ですよ」
「この村が魔物に襲われんのは、あの魔女が結界を張ってるからだ……魔女の利用価値が無くなれば、あのようなバケモノ、村から出すに決まっておるだろうに……」
村人たちの言葉を聞きながら、レインは奥歯を噛み締め泣くのを我慢したのだった。
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