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山菜を採り終えウルフたちと別れたレインは、さっさと村を抜けると母が待つ小屋へ帰ってきた。
「ただいま! 母さん、これだけで良い?」
「お帰り、レイン。あら、こんなにいっぱい、母さん腕が鳴るわね」
ティアナはクスクスと笑い受け取ると直ぐ様に料理を開始する。
その後ろ姿を見ながら、揺れる綺麗な赤髪を見てレインは自分の髪を掴んだ。
煉獄の魔女と言われるティアナの属性は勿論炎だが、青い髪をしたレインの属性は水だった。
「(そう言えば、何で母さんと属性も髪の色も違うんだろう……)」
あの燃えるような赤い髪がレインは大好きだった。
実際魔法を使用したことがないレインが水属性なのは、ティアナが言っていたからだが、どうせなら母と同じ属性が良かった。
「(母さんが……魔法を使ってるの見たことない……)」
だからだろうか、レインは魔法の発動の仕方を知らないし興味もない。
もしかしたら、魔物に好かれる体質のせいで魔法は使えないのかも知れない。
それなら別に魔法は使えなくても良かった。
魔法なんかより、魔物と仲良しの方がレインにとっては都合が良いのだから。
「出来たわよー」と笑みを浮かべる母につられて、レインも笑みを浮かべたのだった。
「……あら?」
「どうしたの、母さん」
夕飯も食べ終わった夜のこと、編み物をしていたティアナが不意に立ち上がり、窓を開け放つ。
「……間違いないわ」
ボソリと呟いたティアナは直ぐ様窓を閉め、本を読んでいたレインの腕をそっと掴む。
「母さん、え、どうしたの?」
「結界が一瞬破られたの……強い魔法量の持ち主が、シーブに侵入したみたい」
「え?」
「……もしかしたら」
ティアナの表情が曇るのを見て、レインは不安そうに顔を歪める。
それを見て、ティアナは慌てて笑った。
「大丈夫よ、レイン。母さんが居るから、何も怖くないわ」
「でも……」
「ほら、部屋に行ってなさい」
ね、と促され、まだ寝るには早い時間だったが、レインは大人しく聞き入れ部屋に足を向ける。
「母さん……大丈夫、なの?」
「えぇ。母さんを誰だと思ってるの? レインの母さんよ、最強に決まってるじゃない」
安心させるように明るく言うティアナに、レインは頷いて部屋に入った。
その瞬間、ティアナは顔を険しくし、ドアを睨む。
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