崩壊した日

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ティアナは手を翳し、ドアに向かって声を掛けた。 「ノックも無しにドアの前に立つだなんて、随分マナーのなってないお客様だこと……私に用があるのでは無くて?」 その瞬間に、バンッとドアが開き、数人の騎士の格好をした人間と、それらに囲まれる一人の少女がコツッと入ってくる。 白銀の髪の少女は、ティアナと目が合うと気まずそうに視線を逸らした。 「(誰だろう……あの人、たち……)」 部屋のドアを少し開け、その隙間から来訪者と母を守っていたレインは、来訪者を見て固まる。 見たこともないが知識として知っている、鎧姿の騎士を見て、どうして騎士が、と小さく呟いた。 それに、その中心にいるあの少女は何者なのか。只者ではないことだけはすぐに理解出来る。 「成る程。私の結界を破ったのは彼女ね」 「…………」 「一瞬とは言え、私の結界を破るなんて、ね……」 聞き慣れない冷めたような声色のティアナに、レインの中で胸騒ぎがした。 悪い予感がする。そう思わずには要られない。 騎士の一人がティアナへ剣を向けた。 「煉獄の魔女よ、貴様の魔法量は15年ほど前から弱まったと聞いている」 「!」 レインは思わず身を乗り出しそうになった。 「(15年ほど前って……僕が生まれた、時?)」 母が自分を産んだことによって魔法量が弱まった、と言うのか、とレインは今にもドアから飛び出しそうになったが、ティアナは憮然とした態度で髪を靡かせる。 「微々たることよ。お前たちのようなただの人間が未だに私の足元に及ばないのは、変わらない事実だわ。違くて?」 「…………」 普段と異なる冷めた声色、言葉にレインはアレが魔女としての母の姿なのだと悟った。 「我々が及ばずとも、この方になら貴様の落ち度は明白だろう」 「……え、あの」 騎士に押され前に出た少女は、ティアナを見て気落ちしている。 「私の落ち度、ね。でも、魔法量があってもそれに合う態度も取れない子供に私が負けるはずはない。戦ったとしても、私が勝つわ。だって私、強いもの」 「面白い」 ティアナの自信に満ちた態度に、騎士の一人は歪んだ笑みを見せ前へ出した少女の肩を掴んだ。
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