崩壊した日

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「ユティ様」 「ほ、本当に……アレを、しなくては……?」 「貴女がなさることで、世界はより平和になりましょう」 騎士に促され、眉を下げた少女はおずおずとティアナへ杖の先を向ける。 意を決したように目を閉じ、若干俯いた。 「私はユティ……煉獄の魔女の後継者として選ばれた、無名魔女、です……」 「後継者……成る程」 ティアナは騎士たちへ顔を向け、せせら笑う。 「つまり、国の言うことを聞かない三大魔女を殺して、新しい従僕な魔女で囲むつもりね」 「殺す……!?」 部屋のドアを開け放ち、レインはティアナたちの元へ姿を現した。 殺すと言うのか、母を。 殺すと言うのか、この騎士たちと少女が。 レインが現れたことに目を見開いたティアナは直ぐ様レインの前に立ち、騎士たちから隠す。 「馬鹿レイン! 出てきてはダメよ!」 「だって、母さんを殺すって……! 僕、母さんを殺されたくないよ……っ」 「母さんが死ぬ訳ないじゃない。母さんを誰だと思ってるの? 最強の魔女の地位にいる、煉獄の魔女ティアナよ?」 「でも……!」 レインが縋るようにティアナの服の裾を掴んだ。 「魔女……に、子供だと……!?」 「何故、魔女に子供が出来てるんだ……!」 騎士たちはレインの存在にざわついていた。 魔女は元来、子を産めぬ体になる代わりに強大な魔法量を宿していると言う。 それなのに、ティアナが必死に隠している少年は、ティアナを母と呼んでいる。 騎士たちにとってそれは不可解な現象で、混乱するのに時間は掛からなかった。 ──ただ、一人の騎士を除いては。 「レイン……早く、部屋に隠れていて。母さんなら大丈夫よ、任せて」 「母さん……うん」 ティアナの言葉に頷くレインを見て、ティアナは嬉しそうに顔を綻ばせた。 愛おしそうにレインの頬を撫で、それからスッと背中を押す。 「おやすみ、私の愛しい息、」 ドスッ。 と、鈍い音が耳を振動させ、目の前のティアナは目を見開いた。 「母さん……?」 「は、ぐ……ぅ」 口の端から赤い液体が一筋。 視線を下にやれば、胸元から突き出ている剣の切っ先。 そこから垂れ落ちる、赤い液体。 「抜かったな、魔女よ。防御結界も張らずに余所見とは」 冷酷な声色と共に、ブシュと引き抜かれ、ティアナの体はそのまま床に投げ出された。
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