ユグナッド城攻略

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「……違う、とは?」 冷ややかな表情で問い掛けてくるブライドに、ジークフィーノは窓の外──地上へと目を向け、それから不敵に笑う。 「レインが死んだ、と言うことがだが?」 「!?」 その言葉にユティが窓から身を乗り出すように地上を見下ろせば、飛竜が羽ばたいていた。 「あれは……ワイバーン!? どうして、王都にワイバーンが……王都上空には簡易結界が張られているのに……」 「! ワイバーンだと……!? まさか……!」 ユティの言葉にブライドは慌てて振り返ったが、そこには先程の兜の騎士の姿は無い。 いつ消えたのかもわからない、ブライドほどの手練れにも気配を読ませ無かった。 理解した瞬間に、ブライドは苛立ちを抑えきれずに壁を叩く。 「チィ……逃がしたと言うつもりか……!」 感情を露にするブライドの言葉を聞き、ユティはワイバーンの下を凝視すれば、そこには数人の人影が見え、「あ」と小さく呟いた。 「レインは……ワイバーンに、助けられて……他の人たちも、無事」 体の震えが止まると同時に安堵感に視界が滲みそうで。 レインは仲間たちを無事救い出し、彼自身もまた無事に城から脱出出来たのだ。 そうわかり、嬉しさと共に沸き立つのは。 「ユーティカリア」 「!」 「お前は、どうする?」 兄が後ろから問い掛けてくる。 ユティは再び震えそうな手で杖を握り締め、振り向かずに下を見た。 「私は……一度、レインから差し出された手を拒みました。此処に戻って来てしまえばもう、彼との約束は果たされないと。私はまた……ブライドや国王様に命じられるままに生きるのだと、そう思ったから」 「……」 「そうです、ユティ様。貴女様はその為だけに煉獄の地位を──」 「でも、私はもう、決めました」 ブライドの言葉を遮り、ユティは窓に足を掛ける。 そう、もう決めたのだ。 我が儘なことはわかっている。 だが。 「今度は私から差し出せば良いんです。私には彼が、レインが必要なんだから」 「ユティ様、何を……! 貴女様は何を仰っているのか」 「ブライド、私がそうしたいと決めました……貴方には、関係ない……んだから!!」 その一言で一思いに外へと、下へと身を投げる。 きっとあのワイバーンが受け取って、レインの元へと下ろしてくれる。 そう、確信したから。 「おのれ、ユーティカリア!」 叫ぶブライドの言葉を聞きながら、レインへ掛ける言葉を考えた。
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