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ティアナの死体をベッドに横たわらせ、レインはその前で手を組み祈りを捧げる。
せめて、愛しい母が無事冥福を得られんことを。
「…………」
「……あの、」
後ろで一連の動作を見守っていた少女は、レインに声を掛けようにもどんな言葉を向けて良いのかがわからず、狼狽えた。
それを横目で見たレインは立ち上がり、少女と対峙する。
「もし、君が僕に罪悪感を感じてるなら、出来れば今すぐに僕の前からいなくなって欲しいんだ」
「え……?」
「ごめんね……何を言ってあげたら良いのか、わからないんだ」
レインは前髪をくしゃりとひっ掴み、苦悶の表情を浮かべた。
彼にとって、世界が変わってしまったばかりだと言うのに、目の前の少女のために言葉を探す。
「君が元凶で母さんは殺されたけど、実際に殺したのは君じゃない……恨むのは間違ってるし、でも君に笑いかけることなんて今の僕に出来ないから」
「でも……私が、煉獄の魔女の地位に就かなければ、貴方のお母さんは……」
「じゃあ!! どうしたら良いのさ!」
「!」
突然の大声にビクッと肩を揺らし、涙目になる少女。
そんな少女の前で、レインは抑えていた涙が溢れだす。
「もう、母さんは何をしたって……戻って来ないんだよ……!?」
「え、その……私、ごめん、なさい……」
「何で! 君は、謝ってばかりなの! 謝ったら、変わるの!? 僕の母さんは、生き返るの!? そんなことが、出来るの!? 魔女だから、君は魔女だから謝れば何でも! 奇跡すら起こせるの!?」
涙を流しながら激昂するレインに、少女は小さく「ごめん、なさい……」としか返せず。
レインはそれを見て、涙を拭いもせずにやり場のない感情を吐き出すように床を叩いた。
「無責任に、謝らないで……!」
「……ごめんなさい」
「そればっかりだ……君は謝れば罪が軽くなる、って思ってるから、簡単に謝罪を口にするんだ」
「っ、私……そんな、こと……ただ、私は貴方に謝りたくて……!」
「何を謝るの? 僕の母さんを殺してごめんなさい、って……訳が、わからないよ……?」
「…………ご、めん…なさい」
「君は……それしか、言えないんだね……」
レインの心は涙と共にまた冷えきっていく。
目の前の少女はただ怯えながら、謝罪をしてくるだけ。
罪悪感を軽くしたいからだろうか、何ともエゴだ。とレインは密かに自嘲気味に笑った。
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