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今まで静観していたゴードが立ち上がり、レインの肩へ手を置く。
「レイン……それは、その……本当か? 魔女ってーのは、子供が産めないんだろ?」
「でも、僕は母さんから産まれてきたんだ。ライラさんも言ってたけど、僕の顔、母さん似だし」
「……そうか……道理で、見たことある顔だと……」
「え?」
「……いんや、何でも無いさなぁ」
手を外し、緩く笑うゴードにポンポンと頭撫でられ、レインは首を傾げた。
「マルシェ知ってます! 煉獄の魔女さんは最強の魔女さんで、すっごくすっごく強いんです!」
「って、待てって。さらっと流すには無理難題過ぎだろ……つか、その最強の魔女が死んで、嬢ちゃんが引き継いでるってことは」
ゼオンの疑問に、一瞬顔を強張らせたユティは、首を小さく振ってから杖を握り締める。
自分はもう、魔女である自分を否定してはいけないと。
「えぇ……レインのお母様を、私と共に訪れた騎士が亡き者にし、私がそのまま後継者として煉獄の魔女と……」
「……あー、成る程ね。だからレインくんと嬢ちゃんに会った頃、一緒に居るはずなのに余所余所しかった訳。母親殺しの仲間と一緒になんてオレは嫌だわな」
「それは、ユティと旅の目的が一緒だからなんだ。僕は父さんのことを知りたくて母さんの友達の他の三大魔女を探してる、ユティも三大魔女に会いに行くってことで、僕らは旅を始めたんだよ」
始めは勿論嫌だったが、シーブ以外世界を知らなかったレインに取っては、色んな知識を与えてくれたのはユティで。
そこであることを思い出し、ユティへと声を掛けた。
「ユティはライラさんとあまり話せて無かったみたいだけど、良いの?」
「……えぇ。もう、お伝えしたかったことはご理解されてると思います」
「?」
どういうことか聞こうとしたレインを遮るように、「ところで」とゼオンが口を開く。
「おっさん平然と居るけど、何モンな訳?」
「ん?」
ゼオンの訝しげな視線に、再び床に胡座を掻きながら静観していたゴードは緩く笑みを溢し、「おいちゃんかい?」と惚けたように自分を指差した。
「おいちゃんはレインの友達だ、よろしくなぁ」
「いや、それは聞いたしアンタには助けて貰ったけど、ねーちゃんより先にこの胡散臭いおっさんを帰してやれよ、レインくん」
「ゼオンよりは胡散臭くないよ?」
「おい」
しかし、巻き込んでしまったのは確かなので、レインはゴードに体を向ける。
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