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「何?」
「いえ、あの……お二人は親しそうにお見受けするのですが……お知り合い、なんですか?」
「あ、そうだ。言ってなかったね。前に王都に来たときに泊めてくれた、僕の友達だよ」
「と……っ!?」
驚愕の表情で固まるユティに首を傾げるレイン、の肩をジークフィーノが叩いて顔を向けさせた。
「レイン」
「何?」
「……いや、お前の仲間を驚かせてしまって、すまなかった」
「? 何でジークが謝るの? 此処はジークのお家だから、お邪魔させて貰ってる僕らが謝る方が先だよ」
「構わない。それに、案内したのはミスティで場所もミスティの書斎だ。礼を述べるならば俺ではなく妹に」
嗜めるジークフィーノにミスティーアが「構いません」と肩にかかる髪を払う。
ふと、杖を握り締めたまま顔を青ざめるユティに気付いたレインは、ジークフィーノから離れ彼女を呼び掛けた。
「ユティ?」
「いえ……何でも、ない、です」
「でも、何だか元気ないみたいだね。元気のあるユティなんて見たことないけど、疲れてるなら座ってなよ」
「……ありがとう、レイン」
「?」
何故礼を言われるのか理解出来ないレインだったが、深く追求せずに頷くだけに留まる。
そんな彼に、マルシェが引っ付いた。
「マルシェは!?」
「う、うん、マルシェは元気いっぱいだね」
「はいです! マルシェ元気です!」
「ははは、おいちゃんも元気いっぱいだぞぉ!」
「マルシェの方が元気です!」
「ほほぉ、どうかなぁ? おいちゃんの方が元気かも知れんぞ?」
「負けないです!」
「何の話だよ」
「ゴード殿、レインについて行かれるのか?」
仲間と戯れるゴードに意外そうなジークフィーノへ、ゴードは「おーよ」と緩く頷く。
「おいちゃん、退屈な余生に飽き飽きしててなぁ……退屈せずに居られそうだろ?」
「成る程……それで、レイン。行き先は決まったのか?」
「え? ……そうだね、まずは北を目指すよ。やっぱりアーネの妹さんが心配だし」
「レイン、あんた……」
アーネが嬉しそうに表情を崩すが、対照的にジークフィーノは表情を険しくした。
「北……それならばこんな場所に何時までも踏みとどまっている場合ではないな」
「え?」
「お前たちは忘れたのか? ……王城の件で街中を騎士が埋め尽くすのも時間の問題だ」
「!」
ジークフィーノの一言で全員が息を飲む。
まだ王城から脱出した、だけに過ぎないのだ。
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