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ミスティーアを追い掛けると、レインは見覚えのある場所で彼女が足を止めたのを見、「此処は」と呟く。
「此処は母屋とワタクシの書斎の間にある中庭ですわ」
「此処に何が来ると?」
ジークフィーノの問い掛けにミスティーアは口角を上げ、上を指差す。
「先程から王都上空をさ迷っていた魔法量の正体が」
彼女が指すその先に全員が目を向けると、そこに羽ばたく姿に目を見開いた。
「ワイバーン!?」
驚いた声に呼応するように、ワイバーンは身を翻し地へと降り立つ。
その魔物に、レインがそっと歩を詰め右手を差し出した。
「君は……さっき、助けてくれたワイバーンだね。また助けてくれるの?」
話し掛けるレインに答えるように彼の右手に顎を乗せる。
その異様な光景に、アーネが身構えた。
「ま、待ちなよ……レイン、あんた、ワイバーンは狂暴な魔物じゃないか!」
「違うよ。助けてくれた、優しい子だよ。ね?」
その問いに低く唸るワイバーンに肩を揺らすアーネは、周りが魔物と接触するレインを咎める様子がないことに更に混乱する。
「ちょ……、何で……危ないじゃないかっ」
「あれ、レインくんから聞いてねぇの?」
「お兄ちゃん、魔物さんと仲良しなんです! だから普通です」
「は……? 何言って」
「成る程なぁ、おいちゃんも聞いとらんかったが、レインと一緒に行動してから魔物の敵意感じらんと思ったらそう言うことかぁ」
一人合点が行った様子のゴードに、アーネは「納得出来るのかい!?」と驚きを隠せない。
「え、ま、待ちなよ……じゃあ何かい? ゴーレムがレインに友好的だったのも、レインが魔物に好かれやすいってことだって言うつもりじゃないだろうね?」
「他に何があんだよ、レインくん以外は警戒されてただろ?」
「そうだけど……そうだけど……っ」
こんな異様なことがあって良いものか、と認められないアーネに、レインが「アーネ」と呼び掛けた。
「僕がリュクリナに入れない"化け物"だって、分かってくれた?」
「──っ、」
「良いんだ……そう言う反応の方が、慣れてるから」
小さく目を細め自嘲するレインに、アーネは返す言葉が無かった。
おかしい、と何度か感じた違和感。
今の彼からははっきりと伝わる、この人間に対する拒絶の雰囲気がそうだったのだと。
理解し、傷付けてしまったことに、言葉が出なかった。
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