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話を切り換えるように、レインはワイバーンの喉を撫でた。
「でも、6人も乗れるかな?」
「長距離なら無謀かも知れないが、王都を出る程度なら踏ん張れるだろう」
「大丈夫?」
ジークフィーノの言葉にワイバーンに問い掛ければ、愚問だと言わんばかりに鼻を鳴らされる。
どうやら、位高いワイバーンはその程度大したことではないようだ、と理解したレインは頷いた。
「そっか。じゃあ、外までお願いするね!」
低く唸るワイバーンが身を低くし、乗れと言うかのように首を振る。
「ありがとう!」
直ぐ様背に飛び乗るレインは、仲間達に手を差し出した。
「僕みたいな化け物と本当に来てくれる人だけで良いよ」
その問いに肩を揺らすアーネ、の隣を駆け抜ける銀色は直ぐ様レインの手を掴む。
「私は、貴方と行くと言いました……レインが化け物なら私は魔女……化け物です」
「ははは……変わったね」
意思をハッキリと伝えてきたユティを引き上げ、隣に降ろせば違う手が伸びてきた。
その小さい手をレインは掴む。
「マルシェは、お兄ちゃんと約束したです! それにお兄ちゃんは化け物なんかじゃないです、優しくてスゴくて、カッコいいです!」
「そうだね、約束したよね」
マルシェがレインの膝上に飛び乗ると、ゆったりとした足取りで上った相手に頭を撫でられた。
「おチビちゃんの言う通りだ、お前さんは化け物とか魔女の息子とかそんなん関係ないぞぉ。レインはレインだからなぁ」
「……ゴード……うん」
年離れた友人に小さく笑い返せば、背中をバシッと叩かれる。
顔を向ければ、黒ずくめがそこに。
「まーったく、レインくんが化け物だから良いんだろ。最初に比べたら随分優しくなったんじゃねぇの」
「相変わらずだね、君らしいよ」
減らず口を溢すゼオンにため息を付けば、たんっと目の前に人が登ってきた。
「アーネ」
「……気分を害させて悪かったね。でも、自分のこと化け物なんて言うんじゃないよ。あんたなんかよりこの国の騎士の方がよっぽど化け物だ……レイン、あんたはただのちょっと変わったガキでアタシの恩人さ。ついてくって言っただろ?」
「……うん」
自分のことを気味悪がっていてもおかしくないのに、此処に居る人間は手を掴み返してくれた。
そのことに酷く、泣きそうだ、とレインは思い奥歯を噛み締める。
悲しくなくとも泣きそうになる経験など、味わったことがなかった。
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