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全員ワイバーンに搭乗したところで、ミスティーアが「レイン!」と呼び掛け何かを投げ渡してくる。
難なく受け取るレインは、それに首を傾げた。
「本……?」
「貴方の属性の魔導書ですわ。魔法を使いたがっていたから、餞別に差し上げます」
「僕の……ありがとう、ミスティ!」
頷くミスティーア、の隣から1歩前に出たジークフィーノはジッとレインを見上げる。
「……」
「ジーク?」
「……いや、多くを語るには時間がない。また会おう、我が友よ」
「うん! ありがとう、ジーク! この恩は必ず返すね!」
「……フッ。そうだな、楽しみにしている。お前"達"の旅に、幸あらんことを」
その言葉を合図にしたのかワイバーンは羽を羽ばたかせ、一気に上空へと駆け上がった。
その姿を見、ジークフィーノは静かに、溢す。
「恩など……お前が俺の妹を、ユーティカリアを導いてくれた恩に敵うはずも無いのに……」
目を細め、眩しそうに笑うジークフィーノの呟きを聞いたミスティーアは、仕方が無さそうに目を瞑ったのだった。
「きゃー速いですー!」
上空へと駆け上がるワイバーンの背ではしゃぐマルシェ、の身体を抱き締めながら、ユティは顔を青ざめていた。
「ひっ……! ま、待って、待ってくださっ、う、……お、おおお、王都の上空には、け、結界、結界!」
「結界が張ってあるの? シーブみたいだね」
限界が近いユティの言葉に緩く返すレインに、「いやいや、のんびりかよ」とゼオンが冷静にツッコミを入れる。
「結界張ってるつーことは、外に出られねぇんじゃねぇの?」
「そうなの、ユティ」
「そ、は、はいっ……! 王都にはっ、たくさんの、ヒィッ、魔女が何人か居て、それで結界を……! だから、門からしか、通れないので……!」
「お姉ちゃん、苦しいです!」
「門からしかって……でも、それじゃあワイバーンはずっと王都に居たってこと?」
肌を撫でてやれば、遺憾だと鼻を鳴らすワイバーンに「違うって」と答えれば「通訳かよ」とゼオンに呆れられるが、代わりにゴードが身を乗り出した。
「おー、ワイバーンが空から来たってぇことは、抜け道があんのかもなぁ。まぁ、しっかり掴まって落ちんようにしとこうなぁ」
「おじさんはのんびりだね……」
「ん? 抱き締めてやろうかぁ、お姉さん」
「近付いたら落とすよ」
アーネに絡むゴードの言う通りだ、とレインは冷静に空を見上げる。
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