方針と意思

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上空を駆け上がっていたワイバーンが突然止まり、羽を羽ばたかせながら前方を睨み付けている様子が気になり、レインは肌を撫で問い掛けた。 「どうしたの?」 「結界のようだな……よっと、ほら」 少しを身を乗り出したゴードが前方に手を伸ばすと、"見えない壁"に阻まれてるような感触を感じ、押す手はそれ以上進まない。 「結構強固だなぁ」 「えぇ……王都では数十人の無名魔女が騎士団に編成を組まれ、隊を持っています。通り名を持たぬ無名魔女でもかき集めれ手を組み力を合わせれば、このように強固の結界を張ることが出来るんです」 「へぇ。じゃあ嬢ちゃん何とかなんねぇの? 煉獄の魔女サマなんだからさぁ?」 「……私は、名ばかりです……結界を破る術は、通り名の魔女でも難しいので……そうですね、私ではない、三大魔女様でしたら可能かも知れませんが……」 ゼオンからの嫌味を嘆くように受け止めるユティを横目で見てから、レインは「結界かぁ」と手を伸ばした。 「シーブの結界、母さんが張ってたんだせどね、村の人たちはそれで外には出れなかったんだけど、僕は出して貰ってたんだ」 「? どういうことだい?」 「僕は村の外……山に居る魔物たちと遊びたかったから、母さんに僕だけ出せるように式を組んだとか……ごめん、魔法のことは全然わからないんだけど、母さんの結界はすごいのは知ってるだけでそのすごさを体感したことなくて」 「はぁ、なるほど? よくわからないけど、最強の魔女なら、結界を通す人間も自由に選べるってことなのかい? 三大魔女ならやりかねないね」 「うん。だから結界って触ったことないから触ってみたいんだ」 好奇心全開のレインは、「結界触りたい物好きとか」と鼻で笑うゼオンを黙殺してから、ゴードが触る場所まで手を延ばす。 「わー……?」 ゴードが触っているだろう境界にまで手を伸ばす、が、レインの手の先は空を切った。 「? 何処にあるの?」 「ん? ほら、ここだぞ、レイン」 ゴードがレインの手首を掴み、結界へと伸ばす。 「? ……何だ?」 「何処?」 先程まで確かに触れていた物が、レインの手を握るゴードの前から"消えている"のだ。 「うん……? ……ある、……ない」 「何してんだよ、おっさん」 反対側の手で触れると確かに壁のような感触があるものの、レインの手を掴む手は結界があるはずの部分の向こうにある。
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