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「──」
その意味することを一人察したゴードは、他の仲間たちに悟られぬように結界からレインを離した。
「ゴード?」
「ちょいと届かんみてぇだ、あまり身を乗り出すと落っこちて危ないからなぁ」
「そっかぁ……」
触れなかったのを残念がるレイン、の意識を途切れさせるように動いたのはワイバーンだ。
「きゃあ!」
旋回するように動き、体勢を崩しかけた一同は皆、落ちぬように捕まればワイバーンは翻したその身を結界目掛けて突進するかの如く進む。
「な、バッ! 目の前には、結界……!!」
誰しもがぶつかると思い、衝撃に耐えるよう身を固めた。
が。
「……あれ?」
衝撃は無く、先程まで結界があっただろうその先に、一同はワイバーンの背に乗りながら越えていた。
「えっと……出れた、の?」
「……そ、そう、みたいです、ね……?」
レインの問いに答えたユティも意味が分からないように辺りを見渡すが、下を見れば確かに王都の外壁は超えている。
それから結界を凝視し、「あ」と小さく声を上げた。
「結界の歪み……のような部分があったようで、ワイバーンはその歪みから一気に出た……と言うこと、でしょうか?」
「歪みって何ですか?」
「ええっと……穴と言いますか」
「つまり、結界の穴を抜いて無理矢理出たってことかい? 無理するねぇ」
女子たちの会話を聞きながら、王都の外へと出たことで下降するワイバーンとレインを見、ゴードが考え込む様子で唸る。
「ふーむ……」
「何だよおっさん」
「結界に歪みつーことは、あれだなぁ……複数の魔女さん達が協力してやったことが裏目に出たつーことになる」
「どういうこと?」
「無名魔女だっけか? その魔女さん達が何人も同じ魔法を合わせてやるとしても、魔法量ってのは個人差が出る……差で歪みが出来、ワイバーンはそこを強行突破したのさぁ」
「へぇ。じゃあワイバーンは賢いんだね」
レインが肌を撫でワイバーンに話し掛けている様子を見ながら、ゴードは目を細めた。
「(歪みがレインのお陰で出来たのかも知れんが……全く、退屈せんなぁ)」
地面が見えてきたのを見、これからの旅の波瀾さを思い笑みが溢れるゴードを胡散臭そうにゼオンだけが見ていたのだった。
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