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森に囲まれた王都を越え、地に降り立ったワイバーンの背から一同が降りてレインが「ありがとう」と顎を撫でてやれば、少し唸るように小さく鳴く。
そうしてすぐに羽を広げ、ワイバーンは羽ばたき去っていった。
「行っちゃった」
「送り届けることが任務だった、みたいだね。誰かに使役されてるんだろ?」
「誰に?」
「さぁ、そこまでは知らないけどさ」
「でも僕たちのことを知ってる人でワイバーンを操って助けてくれたってことだよね? 僕たちを助けてくれるなんて、ジークとミスティ以外に居るのかな……?」
友人の他に知り合いなど、それこそ母の仇の騎士、ブライドしか思い付かず悩むレインに、ユティが声を掛けたそうに口を開いてから、閉じる。
「(レインは、ど、どうやってお兄様と友人になったのかしら……あのお兄様に友人なんて想像も……そ、それにあのミスティとも親しげで……)」
しかし、レインが何も言ってこないと言うことは、ジークフィーノとユティが実兄妹であることを聞かされていないのだろう。
何を言えば良いのか、しかし疑問を振りほどけずに悩むユティを横目に、マルシェがレインの服の裾を掴んだ。
「お兄ちゃん、これからどうするですか?」
「え? そうだね……うん、ひとまず、北を目指そうよ。やっぱりアーネの妹さんが心配だしね」
「レイン……恩に着るよ」
「礼は早いよ、アーネ。助け出せてもいないんだ」
「そうだね」
頭を下げるアーネを止め、レインは懐から地図を取り出し広げるとマルシェ、ゴードが覗き込む。
「でも、北って言っても何処に向かえば良いのかな?」
「そうさなぁ、マダン大陸北側は途中から確かフェインクット……別の国の領土になるんだったか」
「? 何言ってんだ、おっさん。インダートとフェインクットの国境は大陸で分けられてる。海越えねぇならまだインダート国内だぜ?」
「お? そうなのか? いつの間に変わってたんだぁ、ビックリだな」
「は? 100年も前の戦争で、インダートがフェインクットをマダン大陸から追い払ったんだろ」
「おー、あんちゃんは物識りだなぁ」
「……なぁ、レインくん。やっぱこのおっさん置いてこうぜ」
「それならゼオンを置いてくよ」
「おい」
「それにしても外国かぁ」
レインにとっては自分がどの国に居たのかもこの間知ったばかりで、それから色んなことがあった。
更に他の国があると思えば、何があるのか想像も付かない。
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