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弾かれた手とレインを理解出来ないと言った様子で青年の視線を注がれる中、レインは仲間たちを庇うように掴まれた手を横に広げる。
「僕は、僕と一緒に来てくれるって言ったみんなが良い。見ず知らずの得体の知れないお兄さんなんかよりはずっと」
その言葉に目を丸くした青年は、次の瞬間破顔しレインの肩をポンポンと叩いた。
「ははは、何だそれは。本人に面と向かって失礼極まりないぞお前? 面白いな、田舎者と言う奴かい?」
「本当のことだよ、触らないで」
接触を拒むレインを無視し、青年は「よしよし」と宥めるように背中に手を回す。
「そう拒絶は良くない、ボクはお前のことを気に入ったんだ。"ボクら"とお前は同胞なのだから」
「はら、から……?」
「仲間、と言えば良いか。人間なんかには相応しくない──希少なお前をボクらは歓迎しよう」
妖しく笑う青年の執拗なまでの手引きに、レインは思考を巡らせた。
「(仲間? この人と僕が、同じってこと? ……人間なんか、ってことは人間じゃない……?)」
別の存在であることを強調する物言いと、この存在感。
魔女、特にライラに感じたのとは別の、畏怖と何処か危うい懐かしさを感じる。
差し出される手を取れば楽になれそうな、もう辛い思いなどしなくて済むと言う安心感すら感じ、一瞬その手にそっと手を伸ばす。
「レイン! いけません!!」
「!」
「貴方には、やらねばならないことがあるではないですか!」
「そう、だ……」
ユティの悲痛な叫びに近い制止の声に、レインは伸ばしかけた手を握り締め下ろした。
父を行方を探さねばならない、仲間との約束を果たさねば……大好きな母に失礼だ。
青年を押し退け後退るレインに、青年はやれやれと言った様子で首を振る。
「出来損ないと言えど魔女、何処に居てもボクらの邪魔ばかりだ」
青年から距離を取ったレインを庇うようにゴードとマルシェが前に出るのを見、興醒めた青年は踵を返した。
「日を改めるとするよ、レイン。覚えておくと良い、お前の事を分かってやれるのは"ボクら"だけと言うことをね」
顔も向けずにそう言い放った青年が指を鳴らすと、まるでそこに居なかったかのように姿を消す。
驚く一同は、「大丈夫か、レイン」と一人、気にしないゴードの呼び掛けにレインへと視線を向けた。
「うん」とだけ頷くレインはそれ以上言わず、ただ伸ばしかけた手を握り締める。
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