崩壊した日

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「バケモノ! お前なんかを村に置いといたのが間違いだった!」 「そうよ、魔女が死んだらこんなバケモノ、早く村から追い出しましょう!」 「そうだ、またこのバケモノが魔物を呼んだら一溜まりもない!」 「出てけ!」 「この村から出て行け、バケモノ!」 動かなくなったレインを囲み口汚く罵る村人たちに、少女は顔を青ざめる。 「(酷い……、そんな言い方って……あんまり、です)」 バケモノ。 この言葉がどれ程、胸を抉る凶器なのか、この村人たちは知っているのだろうか。 まるで、人間として扱われていない。 彼自らが村人を襲ったのか。彼が指示して魔物を襲わせたのか。 少女は唇を噛み締めた。 「(私……どうしたら……)」 擁護したい、でもそれは迷惑になるような気がして、足がすくむ。 弁護したい、でもそれだと嘘をついた意味を邪魔するように思えて、言葉が出ない。 やはり、少女は立ち尽くす他、無かった。 「待たれよ……皆のもの……」 そこへしゃがれた老人の声が響き、村人たちを掻き分けて現れたのは、このシーブの村長だった。 「村長」と村人たちが呟く中、村長は横たわるレインの元へ来ると、しゃがみこんだ。 「レインや……教えてくれ。何故、ティアナは死んだ。よもやあの魔女が寿命や病に臥した、とも思えん……何故、死んだ」 村長の言葉にレインは拳を握り込み、体をそのままに小さく、呟く。 「……殺されたんだ……」 「殺された? あの魔女がか?」 「あの……っ」 少女が、そこで声を上げれば全員から視線を浴びる結果となる。 「娘……誰だ、余所者であろう?」 「あ、あの、私が……私が悪、」 「君は黙っててよ!」 「!」 レインの大声に、少女は肩を震わせる。 村人たちも急に叫んだレインに驚きを隠せないが、レインは上体をふらふらと起こし、少女に厳しい表情を向けた。 「君が、君が何か言えば言うだけ、混乱するし悪化する。僕は……もう、良いよ……出てけ、って言うなら出てくだけだから」 レインはそう言うと立ち上がり、ふらつきながら誰とも顔を合わせず村の方へ足を向け、それからピタリと足を止める。 「今まで……ありがとう、ございました」 それから、さようなら母さん。 と小さく呟いたレインは、直ぐ様駆け出して行ったので、少女は「ま、待って下さい」と後を追い掛ける。 残された村人たちは気不味そうに顔を見合わせ、これで良かったのだと納得しあった。
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