崩壊した日

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村の外に出たレインは、全身に受けた殴打の痛みにその場でしゃがみこんだ。 「(……痛い)」 体だけじゃなく、心まで。 じわりと視界が滲み、目尻から溢れる涙を拭う。 母を殺害され、故郷からは追い出された。 レインの心は、もう限界だった。 「もう……やだよぉ」 母さん、と呟き拭う涙は止まらない。 生前の母が傍に居れば「男の子なのだから、あまり泣いてはダメよ?」と優しい声色で抱き締めてくれた。 その母は、もう傍に居てくれない。 「かあ、さん……っ、」 独りだ、とそう自覚した瞬間に、心が砕けそうになる。 もう何も無いのだと思うと、どうして良いのかわからなくなった。 「クゥン……」 「ヒャン!」 すり、とレインの体を包む温もり。 顔を上げれば、ウルフたちがレインを包み込んでいた。 「みんな……」 足元にじゃれる子ウルフを撫で、顔をボスウルフに舐められる。 「(あっかい……)」 ウルフたちの温もりに、自然と笑みが溢れた。 すると、周りから他の魔物たちもレインの周りを囲みだす。 あぁ、そうか。 「僕には……みんなが、居たんだね」 「ガゥッ」 ボスウルフが顎を舐めて、鼻を寄せてくる。 母亡き今、レインにはまだ友がこんなにもいるではないか。 しかし。 「みんな……どうして、シーブの村を襲ったの……?」 聞き返せば、ウルフたちは村の方向を威嚇し、それからレインの胸元に顔を寄せてくる。 彼らは、ティアナの結界が消失後にレインが悲痛に泣き叫ぶのを聞き付け、村人たちや騎士たちから守るように駆け付けたのだった。 昔から村に近付いたら驚かれるからダメだよ、と言うレインの言い付けを破りたくなるほどに、彼らはレインの悲しみが耐え切れなかったのだ。 「でも……良いんだ。僕がシーブに居ちゃいけないんだもんね」 小さく笑うレインの下に周り込み、ボスウルフは背に乗せて歩き出す。 「え、何、どうしたの?」 「ま、待って……下さい!!」 村からの道のりを、やや危なげに走りながらこちらにやって来る、少女。 魔物たちは少女の魔法量に気付き直ぐ様警戒するが、ウルフの背にいたレインが制するように手を上げる。 「君は……どうして?」 息を乱しながら傍にやって来た少女へ、レインは純粋にその質問をぶつけていた。 何故、この少女は追い掛けてくるのかが理解出来なくて。
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