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「か、関係なく、ない…です」
少女は意を決したように杖を握り締めたが、レインは首を傾げる一方だった。
少女と関係があると言えば母を亡き者にされた件だけだが、それに対してならレインは答えを見つけている。
「もし、君が罪滅ぼしの為に僕について来るつもりなら、それはやめた方が良いよ。今は君に怨恨の感情を向けていないけど、そんな気持ちで傍に居られたら錯覚していつ君に刃を向けるかわからない」
母の直接的な仇は金髪の騎士だが、少女は要因として含まれている。
なるべくなら仇討ちはしたくない、とレインは首を振った。
が。
「ち……違います! 私、その…許して貰おう、って思うのを、やめました!」
「え?」
「貴方に謝罪して許しを請うばかりの自分に気付いて、恥ずかしく思いました……だから、私……違うんです……その、」
レインの話を聞きながら、考えていた言葉を思い出せない。
どうすれば自分の意見が言えるのか。
少女はいつも他人の意見に従って生きていた、だからレインのように自分の意見を聞いてくる相手に対してどう答えれば良いのかがわからない。
俯いて混乱している少女に、レインは1歩近付き下から顔を覗き込んだ。
「!」
その距離に驚き顔を上げれば、レインは下から見上げながら目元を和らげる。
「君は、君のしたいことをして良いんだよ。僕の為に、って理由は要らないんだ」
「え……」
「君が僕の元に居た理由は、謝りたかったから。それは済んだし、これからはまた君がやりたいことを見付けて。そしてそれが僕と同じ道を行くことなら一緒に行こうよ」
そう言いながら、スッと右手を差し出される。
レインと同行する理由は、レインの為でないこと。
それなら、ある。
だが、自分の意見を言っても良いのか、と少女はレインの顔を見れば、彼は少女の言葉を待っている。
なら、と少女は意を決して杖から右手を外した。
「わ、私……どうしても、他の三大魔女のお二人に、会わなくちゃいけなくて……だから、その……ついて行っても、良いですか……!」
レインの前に右手を差し出せば、それはスッと握られる。
「うん、良いよ」
少年の世界が崩壊した日、全てを失った少年は原因の少女と旅に出ることとなった。
母亡き少年が父を探す道程が世界を動かすことになることなど、彼は知らない。
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