prologueー妖怪見えし眼《まなこ》ー

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『妖怪はのう、信ずる心、(おそ)れる心を持つ者だけの前に姿を現わすのじゃよ』 小さい頃、じっちゃんに良く聞かされた話だ。 まだ幼い俺にとって、妖怪という未知の存在は、興味を惹くには充分事足りた。 近所では変わり者だと常日頃から噂されていた祖父だったけど、妖怪を友達に持つじっちゃんは、俺の憧れだった。 そして幼稚園に上がる頃、その日は突然訪れた。 妖怪が……見えるようになっていたのだ。 その話をじっちゃんにしたら、泣いて喜んでいたのは今でも鮮明に覚えている。 それからの毎日は驚きと楽しみの連続で、気付けば俺は、交友関係を(かえり)みない人間になったいた。 妖怪だけが友達になっていたのだ……。 その事に気付いたのは小学生の頃。 周りには友達が居らず、学校では殆ど一人で過ごす事が多かった。 何人か話しかけてくれる奴もいたが、俺の態度を見て次第に離れていった。 荒んだ学校生活を送る事、早三年。 小学校高学年になる時にそれは起きてしまった。 じっちゃんが……死去したのだ。 俺は……現実から目を閉ざした。
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