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雲ひとつない青空、風が徒に桜の花びらを散らしている。購入してから数えるほどにしか着用していなかった蒼の制服を身に纏い、一人の赤い瞳の青年が警察学校の前に立っていた。
「今日でここともお別れか」
視線の先には自分より遥かに大きく青春時代を過ごした黒ずみさえ見当たらない真っ白に塗りつぶされた三階建ての校舎。その中央にある金色の星形の紋章を眺めながら在学中の記憶を懐かしむ。
入学から卒業まで馬鹿との記憶しか、思い出せなかった。三年間一緒にいたってことは口ではハッキリ言えないがあいつとは気が合ってたのかもな。
「そろっと教室に行くか」
この場所に名残惜しさを感じつつ別れを告げレイ=キアーズは肩の桜を払いのけ教室へ歩く。桜の木は別れを悲しむように風で揺れた枝が手を振っていた。
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