警察学校

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 教室は20人が入れるほどの大きさで机と教卓と努力・協力・勤勉と書かれた貼り紙しかない寂しい空間。教室内は既に20人程いて、一人の机の周りに集まり楽しそうに雑談している。  卒業式だというのに悲しむ素振りをしている人は誰もいない。むしろ喜びを感じている。あの厳しい訓練を思い出せば当然と言える。雑談しているグループから一人、こちらに気付いて頭の上で手を大きく振りながら近付いてくる。  教室なんだから手を振らなくても、とレイは狭い教室で注目を集める馬鹿に呆れながらため息を吐く。クラスメートの興味は入ってきた人物を見た時点で薄れている。目の前に立たれるとそいつはレイより頭半分高い。入学時は同じ身長だっただけに少し負けた気分になる。 「おはよう。レイ」  訓練で張り合う馬鹿ことカリム=フラージュ 。金髪のオールバックに厳つい顔、子供が泣くんじゃないか思ったほど厳つい、実際教官の子供を泣かして説教を受けていた。こんな顔でも優しいやつで警察学校に見学に来ていた幼稚園児に飴を配っていた。しかし、誰も受け取らなかったので代わりに配ってあげたら幼稚園児は進んで受け取りに来てその光景を見てカリムが凹んでいたのは懐かしい記憶だ。 「おはよう。カリム」  優しいのに報われないカリムに簡単な挨拶を済ませ席に着く。
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