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席に座るとカリムが目の前の席の椅子の向きを変え向かい合う。熟年刑事が尋問するときの口調ような低い声で身体の前で腕を組み足を机に上げて聞いてきた。レイは乱雑に自称熟年刑事の足を払いのける。
「レイ=キアーズさんだったね。君はどこの課が希望なわけ?」
警察学校は卒業式の日に卒業した後の所属場所を発表する。周りで行われている雑談の内容も大半はこの話題で持ち切り。
「俺は刑事課がいいな」
足を払われた後も熟年刑事の尋問は続く。
「なぜ、刑事課をお選びに?」
カリムは机の上に肘を置き右手と左手を指が交互になるように組む。顔が近く、その凶悪さが際立つ。
「警察官になるきっかけを作った人がさ、刑事課に‘いた’んだよ」
‘いた’人を思い出し背もたれに体を預けてレイは少しの間感傷にふける。
「そうなのか……」
頭を掻くと、ばつが悪くなったのかカリムがそれ以上口を開かなかった。
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