お茶会への招待状

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じりじりと照りつける太陽。まるで真っ暗なキャンパスに輝く星々に嫉妬したハートのクイーンが空に打ち上げた巨大なダイヤモンドを思わせる輝きを放つそれは全ての人々に分け隔てなく平等に攻撃的な光と侵略的な熱を絶賛無料で提供している。 そんな無慈悲な恩恵を受けて青々と繁る植物たちにより形作られた緑の迷宮は、城主の悪意と庭師の遊び心をもって今日も二人の客人を盛大にもてなしていた。 「ああ、もう……」 綺麗に切り整えられた深緑樹の壁に手を添えながら歩いていた少女は、静かにタメ息をついた。茶色く映える髪は風に弄ばれてヒラヒラと宙を舞う。恨めしそうに太陽を睨みつけ、はぁ、と落胆の声をあげる。 「こんなに晴れるんだったら、洗濯物外に出しとけばよかったなぁ」 「……そこ!?」 思わず声を出した少年は、帽子を深くかぶり直して少女の方へと向き直る。 「そこは普通、日焼けとかシミとかを気にするべきなんじゃないかな真壁さん」 病気なんじゃないかと思うほどに真っ白な顔色をした少年は、はは、と笑いながらキョトンとしている真壁 司へハンカチを差し出す。ありがとっ、と言ってそれを受け取って汗を拭く彼女を一通り鑑賞すると、改めて自分の姿に目を通した。 黒い燕尾服、まるで何処かの豪邸で働く執事のような姿。そして肩からぶら下がる鋼のチェーンの先には両腕を使って作った円ほどもある巨大なアナログ時計。そしてこれまた漆黒のハットには白いウサギの耳。対する真壁は青を基調に鮮やかな紋様の入ったドレスに頭の上には赤いリボン。 真壁さんは何を着ても似合うなぁ。と心の中でひとりごちる。 「もう、いつになったらここから抜け出せるんだろ」 「きっともう少しだよ」 彼女への気遣いから出た言葉だが、半分は自分に言い聞かせる為だった。なんでなんでもないただの高校生がとある城の巨大な庭で迷子にならないといけなかったのか。それは少し前の時間にさかのぼる必要がある……
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