クロとボク物語

『ボク』～小学2年生～

「……あっ」

　絵の具セットからパレットを取りだし、広げた時。ボクは気がつき、小さく声をあげた。

「洗い忘れてた……」

　手にとって開いた、ボクの白いパレット。そこに、洗い忘れていた絵の具の汚れがこびりついていたのだ。
　最後に使ったのはいつだっけ。たぶん、一学期の図工の時間かな？　……ってことは、1ヶ月ぐらい洗ってないのかな……。
　やっちゃったなぁ。ばれたらママにお小言を言われちゃいそうだ。

　だけど、幸いにも汚れた所はそんなに多くなかった。赤と緑の絵の具の汚れが所々と、他の色の絵の具の塊が2、3個。今からでも洗えば落ちそうだったか、ボクは早速洗うことにした。
　ママに見つからないように、こそっと洗面所へ。

　しゃこしゃこと、泡を立てて洗う。
　手でゴシゴシとパレットを擦りながら、ボクは細心の注意を払っていた。ママにばれないように、しずかにしずかに。
　ボクは、よくママに怒られる。なんであんなに怒りっぽいんだろう。寝坊したら怒るし、お茶碗片付けないと怒るし、アイスクリーム勝手に食べると怒るし……。
　あーあ、めんどくさい。

　しゃこしゃこ、ゴシゴシ。