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「あ。ごめん」
「・・・・いや」
はーびっくりした。と言いながら、晃二が体勢を立て直す。
「まあ・・・大体、何があったのか察しはついたけど」
苦笑して、なにやら晃二が一人で納得している。
何を察したのか、できれば理解したくない。
付き合い始めても、零と鈴の関係が大きく変わることはなかった。
手を繋いで歩くこともないし、唇へのキスも、一度もない。
およそ付き合っている男女がするようなことは何一つ、二人の間に起こらなかった。
ただ時々。
本当に時々、零は鈴を強く抱きしめて、噛みつくようなキスを体に落とした。
縋るような、追い立てられるような時もあったし、からかうような余裕のある時もあったが、いずれにしても、そうすることで零が何か、気持ちの安定を取り戻しているのだと言うことは、何となく分かった。
でもそれだけだ。
他には何も無い。
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