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「それで、被害にあったのがこの町って事だよ」
「へー、お兄ちゃんよく生き残ったね。ほとんどの人が死んじゃったんでしょう?」
「オレも7歳だったからな…あんまり覚えてないけど、魔女の人が助けてくれたんだ。」
他愛もない話をするオレと3つ年下の近所の男の子。
かつての戦いのことに関して話すといつも不思議がられる。
『なんで生き延びることが出来たんだ?』
オレも正直はっきりとは覚えていない。ただ、魔女が守ってくれたことだけは覚えている。
ショートヘアの真っ黒な服と帽子に紫のリボン…当時のオレの記憶はそれだけがはっきりと印象付けていたらしい。
その魔女がどうなったのか、オレは知らない。気が付いたら知らない部屋だったからだ。
「おーい!!シェイドー?出発の時間よー!」
遠くの方でオレを呼ぶ声がする…。この男の子の母親だ。
「じゃあな、暫く帰ってこないけど元気でな。」
「うん!お兄ちゃんも頑張ってね!」
こつん、と軽く拳をぶつけて町の門まで歩いた。
門は10年前、元々木で作られた簡単なものにジャンヌが強力な結界を張ったもので幾度と泣くこの町を守ってきてくれた。
その門の前には見送りの為に来た人が数人いる。母の姿もあった。
門を遮るようにして立っているのはこの町の町長。長く白いひげと髪が風に揺られている。
「お前が立派な大人になって帰ってくることを祈っておるぞ。」
「はい、必ずご期待に沿えるよう成長してまいります。」
「うむ…。では行ってきなさい。」
「行ってきます!!」
たくさんの声援を受けて門の外に出た。
今までとは違う広い大地…。吹きぬける風がオレの黒髪と真っ白なロングコートを揺らした。
流石に暑いので胸元ぐらいまでは開けているが…。
背中に背負った剣を背負いなおして新たな一歩を踏み出した。
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