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その時いきなり襖が開かれた。
涙はビクッと肩を震わせてその方を見遣った。
「おぉ、起きとる起きとる。
よぉ寝たの~。」
ひょこりと顔を出した男は、伸ばしっぱなしの髪とヒゲの合間から、人懐っこい笑顔を覗かせている。
正直、綺麗ではない。
そのうえ男はなぜか着物を着、腰には丁寧に刀まで差されている。
(…その歳でコスプレ?
あんま関わりたくない。)
その風貌に涙は顔を引き攣らせながらも尋ねた。
「あのー…あなたが助けてくれた んですか?」
「宿の前に倒れとっての。
勝さんが助けたれって……あ。 おまんは異人かえ?」
「は、異人?
…いえ、日本人ですけど。」
(そっちこそ何語だよ。イタいよ この人。)
よく意味のわからないことを言う男に、もはや涙はドン引きである。
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