◆幕末

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その時いきなり襖が開かれた。 涙はビクッと肩を震わせてその方を見遣った。 「おぉ、起きとる起きとる。  よぉ寝たの~。」 ひょこりと顔を出した男は、伸ばしっぱなしの髪とヒゲの合間から、人懐っこい笑顔を覗かせている。 正直、綺麗ではない。 そのうえ男はなぜか着物を着、腰には丁寧に刀まで差されている。 (…その歳でコスプレ?  あんま関わりたくない。) その風貌に涙は顔を引き攣らせながらも尋ねた。 「あのー…あなたが助けてくれた んですか?」 「宿の前に倒れとっての。  勝さんが助けたれって……あ。 おまんは異人かえ?」 「は、異人?  …いえ、日本人ですけど。」 (そっちこそ何語だよ。イタいよ この人。) よく意味のわからないことを言う男に、もはや涙はドン引きである。
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