◆幕末

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そんな涙は気にも留めず、その男は近くにあったタオルを手に取り、満面の笑顔で言い放った。 「名乗り遅れたな。  わしは坂本 龍馬(サカモト リョウマ)ぜ よ。よろしゅう。」 「……。」 絶句。 当然の反応である。 涙は何も言葉を発することが出来ない口をパクパクと動かす。 「なんじゃ?魚のマネでもしちょ るんか?」 「……さかもとりょうま?あ、あ の?」 「わしんこと知っとるきに?」 (え、知ってるも何も坂本龍馬っ てあの“幕末の英雄”の…?) 坂本のくりくりとした目から視線を逸らしながら、涙は曖昧に頷いた。 (ど、同姓同名よね。うんそんな わけない。ありえないありえな い。) そう懸命に自身に言い聞かせながら、もしやと恐る恐る坂本に聞いてみる。 「今、何年ですか?」
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