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「……東京?」 私こと水遇蓮奈(スイグウレンナ)は、夕食の素麺を啜ろうと構えた姿勢でそう言った。 少し深いガラスの皿には、適度に盛った素麺を土台に、千切りにしたキュウリとハム、薄焼き玉子が円状に鎮座している。 そこに、酢と胡麻の風味が効いたかけ汁で夏らしいさっぱりとした味付けになっている。 見た目に涼しげなこの麺料理は、素麺が中華麺であれば、冷やし中華とあるところでは呼ばれる。 周囲の大半が関西人だからか、はたまた私が生まれも育ちも京都のためか、とにかく私はこの麺料理を冷麺と呼んでいる。この場合、京都府でなく京都市を指す。 そんな京都の夏は、南国とも張り合えるだろう蒸し暑い日が続いている。 盆地特有の熱気と湿気の最強、いや最凶のコラボレーションは、気象庁が出す数字を上回るものを細胞単位にまで知らしめてくれる。 残り少ない気力も体力も奪いつくそうと躍起になっているのでは、と思うくらいである。 なぜ、こんなに冷麺もどきについてこれだけ説明するのか。 それだけ、さっぱりよく分からなかったのだ。
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