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――ピィィィッ
ガヤガヤと騒がしい人の渦の中
父と母と一緒に歩いていた
「これが汽車か!」
「凄いわね」
黒く輝く車体は悪魔のように思えた
すこし怖かった
「…ご乗車されるお客様は乗車券をご用意して下さい」
マイクを片手に制服を身にまとった男の人が案内をした
「さぁ、乗るぞ!」
父の歩く速度が速くなった
俺たち家族は中に入った
悪魔のような外見からは想像できないような風景が広がっていた
車内は暖かくて、椅子はフカフカで、怖いなんてもう思わなかった
『一番線から列車が出発します』
ピィィィーッと汽笛が鳴いて、ちょっとずつ車体が揺れ始めた
暫くすると、窓の外の景色がドンドン変わっていった
「速い、速い」
「おぉ、速いなぁ!」
父と一緒にはしゃぐだけはしゃいだ
母は優しく微笑んで俺たちを眺めていた
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