おはよう

2/11
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
――ピィィィッ ガヤガヤと騒がしい人の渦の中 父と母と一緒に歩いていた 「これが汽車か!」 「凄いわね」 黒く輝く車体は悪魔のように思えた すこし怖かった 「…ご乗車されるお客様は乗車券をご用意して下さい」 マイクを片手に制服を身にまとった男の人が案内をした 「さぁ、乗るぞ!」 父の歩く速度が速くなった 俺たち家族は中に入った 悪魔のような外見からは想像できないような風景が広がっていた 車内は暖かくて、椅子はフカフカで、怖いなんてもう思わなかった 『一番線から列車が出発します』 ピィィィーッと汽笛が鳴いて、ちょっとずつ車体が揺れ始めた 暫くすると、窓の外の景色がドンドン変わっていった 「速い、速い」 「おぉ、速いなぁ!」 父と一緒にはしゃぐだけはしゃいだ 母は優しく微笑んで俺たちを眺めていた
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!