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「母さんは…、もうダメだ。お前の後ろに転がってる、絶対に振り向くな」
それを聞いて振り向こうとしてしまったが、父に制され、絶対見てはいけないものだと思い止まった
「父さん、今すぐ引っ張り出すから…」
その前にとにかく父を助けないと、と思い父の手を引っ張るが、父は抵抗した
「俺ももう無理だ、こうやって話ができること自体奇跡なくらいだ」
「何いってんだよ、あと100回は高校の頃の自慢話してくれんじゃねぇのかよ!!」
「あぁ、そんなこと…言ったっけな…」
段々と声が弱まる父の手を握り直した
「ごめんな、お父さん…死ぬわ」
死ぬわじゃねぇだろ…
ゆっくり閉じられる瞼を俺はただ見つめるだけしか出来なかった
「じゃぁ、な」
握った手から伝わる、力が消えた感覚。
父の目の端から溢れた涙の一滴で、なにかがはち切れたように俺は人形のように全身から力が抜けた
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