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十人テーブルをひとつ占領してビールを林立させる。フラウが手にしようとしたら「いけませんよ」とおしおにそっと遠ざけられ、果汁をグラスで別注文する。
――そんなにビールが好きじゃないの、気を使ってくれているのね。
「あんたらはマーラル初めてか?」
グビっといきながら肴を摘んで問いかける。飲んでいる間は喧嘩もしないらしい。
「何回目かしら? でもすごく久しぶりよ。最近はここどうなのかしら」
正味のところ前に来たときはすぐにマーラル城に行ってしまったので、フラウは全く記憶に残っていなかった。
――あの時の城主はのみりんさんだったかなー。
「治安は乱れるし、税金は高いし、徴兵にもとられるから住んでるだけでも辛いわな」
ことさら悪く言おうとしているわけではなさそうだ。皆がみなうんうんと頷いて愚痴っぽく続ける。
「人里離れた場所にしか出なかったようなモンスターも、ちらほらと郊外に出るようになったしな」
黙って聞いていたおしおがジョッキを置いて彼等に尋ねる。
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