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白のセーラー服を着た女性が、腰に片手をあてながら斜め上を指差し叫ぶ。
「ローズランドよ、あたしは帰ってきた!」
「フラウさん、カメラそっちじゃありませんよ」
黒い髭を生やし、すらりとした体型、五十絡みの紳士が彼女に告げる。絶えず微笑を浮かべたナイスミドルとは彼の事だろう。
同じ体勢のまま、くるーりと反対に向き直った。器用なやつである。年の頃は十代の半ば位に見えるが、実際は不明。
「あれっ、シオンはどこにいったのかしら?」
きょろきょろと辺りを探すが姿は見えない。港の桟橋から船を見る、近視の為か目を細めた。
「あ、居ましたよ。ほら甲板の後ろ側に」
視線を移すと船員と揉めているではないか。声が風に乗って微かに届く。
「いや、だから三人組なんすよ。ほらこっち見てる、あのおっさんと白セーラーのだって!」
――おー騒いどる騒いどる。しょーもないやっちゃな。
「おしおさん、ちょっと引き取りに行ってくるわね」
「はい、お待ちしています」
すぐに二人で戻るだろう、彼の常識的な見通しは海に流されたようだ。
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