ハイランド王国港町マーラル市

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「では向かいましょう」  背筋を伸ばして装飾つき甲冑を一部だけ着用し、翠の外套を翻して騎馬する姿は絵になる。ポールウェポンを馬の左脇に立てて先頭を行く。  ――威風堂々の見本ね! ま、とんだ物好きではあるけど。  白セーラーに水色の外套、ジャベリンをぶら下げてフラウが左後ろに続く。彼女の妻手を守る意味合いからシオンが右側に並んだ。 「大体の場所は解ってるのよね?」  土地勘もあるし心配することもないが、一応声かけだけしておく。別にわかりませんと言われても、何をどうするわけでもない。 「はい。馬足ならば一時間程でしょう」 「あ、そ」  移動を完全に任せてしまい、居眠りしようと画策する。変化があれば注意を発してくれると信じて。  山脈と太陽のある位置から方角を定める。これといった特別な作業ではなく、生活の知恵の延長にあった。雲の質や湿気から雨を予測するのも似たような経験から導き出される。  勘とは出鱈目ではなく、経験から産み出される直感のようなもので、本人すら意識しない総合結果と言えた。
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