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カッポカッポと揺られながら、やってきたのは雑木林。平地に姿を晒しているわけもなく、何と無く納得できた。
「この辺りですね」
「おかしいわね、何もないわ」
「全くです」
夕暮れ時の郊外、それからもあと少し離れた場所で、数回モンスター被害があった問題の地域である。
「おかしいって何がすか? 何にもないけど……」
キョロキョロしながら異変を探すが、これといって見当たらない。おしおは優しくそれを見ているだけであるが、フラウは容赦しない。
「無いからおかしいって言ってんのよ。警備が正気なら治安維持にパトロールするのを見掛けたってよいはずが、なーんにも」
「なるほど! 警らする必要が無いと」
「えっ?」
二人がシオンの一言に引っ掛かりを感じた。
――必要が無いと解っている? つまり原因が何かを知っていて隠している。ろくな理由じゃないでしょうけどね。
「おしおさんはどう思う?」
「有り得なくはない、といったところでしょうか」
主語を省いて重要な部分で意識を擦り合わせてみる。
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