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「けどこれで何かわかりそうね」
おしおとシオンが駒を進めて武器を構えた。あまりにもタイミングよくティグレの群が姿を現したのだ。
「シオン君、私は後ろに隠れている者を捕らえてきます。フラウさんを頼みます」
「おうよ、任せとけ!」
唸りをあげて眼前に陣取っているのは、背丈は一メートル、体重は百キロを越すだろうメスが四頭だ。後ろにはオスが一頭いて、体格は二割増し程度に見える。
牙があるあのごつい顎に噛み付かれたら、四肢くらいはあっさりと折れてしまうだろう。
軍馬ではないせいか乗馬が怯える。しかし乗り手の心が乱れていないのが伝播し、すぐに平静を取り戻した。
「ハァ!」
おしおが単騎でティグレの群れのど真中を突っ切る。馬の足を狙って噛み付こうとする奴を、穂先で牽制し石突きで飛び掛かるティグレを叩き落とした。
鮮やかな手並みに見てる側が笑みを浮かべてしまう。
「まったく、あたしなんかに付き合っていないで戻ればいいのに」
「姐さん、何か言った?」
「なーにも」
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