ハイランド王国港町マーラル市

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 おしおがオスに向かうのをみて、メスが二人に迫る。俊敏な動きではあるが、体が大きすぎるせいで損をしている。  二頭がシオンに襲い掛かる、馬への攻撃を避けながら何とか対応するが上手くない。一頭はフラウを狙いじりじりと距離を詰める。 「ケダモノのくせにあたしに歯向かうなんて可哀想なやつ」  ――本能では拒否しているのに無理矢理やらされている感じがあるわ。  前足を広げて飛び掛かる。フラウは体勢を低くしてジャベリンを脇の下目掛け差し込み、ティグレの軌道をずらした。受け流しの要領である。 「後ろ!」  死角。気付かないヶ所から石突きで散らされた一頭が飛び掛かってきた。 「風よ!」  瞬間、フラウの後方に突風が巻き上がりティグレを上空へ舞い上げた。首を傾けねばならない位の高さまで跳ね上げられ、次に重力に逆らえずに墜落する。  何とか足を下にして着地するが、体重が半端ではないので全身を痛めてしまう。 「ナーイス、ちゃっちゃと片付けておしまい」  不意打ちさえなければ自身の身は守れる、その位の経験はあった。
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