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シオンは慣れてしまっているが、詠唱も無しに魔法を放ったのは極めて異常である。魔法とはすべからく構成を編んで後に効果が現れるものだからだ。
「ケダモノ二丁あがりっと!」
何故だか急に動きが鈍くなったティグレの前足を切りつける、するとその場に座り込み大人しくなってしまった。
――おしおさんは?
全てのティグレを視界に収めつつ姿を探す。すると背中に槍を当てられ歩かされている男が見えた。
「原因を捕らえて参りました」
頭の後ろに手を組んでいる男、近くの住人ではない。軽装ではあるが兵だと判断できた。
「なぁに、マーラル軍の仕業なの?」
「黙秘しております。ですがマーラル軍ではないです。ハイランド軍の所属でしょう」
――地方軍じゃなくて国軍の手先か。少し顔に出たわね。
何とか隙をみて脱走を試みようとしているのか、目は死んでいない。
「どうするの? あたしは何でも構わないけど」
「一人というわけはありません。仲間のところに手引きしてもらいましょう」
罠や襲撃は百も承知で敢えてこの場で言葉にする。
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