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「お、わりぃなおっさん!」
「どういたしまして」
船員には特に丁寧に謝り、二度とこのような真似はさせないと約束する。チケットさえあるなら騒ぐ必要は無い、大人の彼らは溜飲を下げた。
桟橋に降りてくる二人を待ち構える。彼女はシオンが脇をみた瞬間に、えいっと押した。
「えっ、あっ、あぁーっ!」
ザッパーン。見事に海へと転落する。それを睨み付け肩を怒らせ甲高い声で叱りつけるではないか。
「こらシオン、おしおさんをおっさんて呼ばないの! 海に沈めるわよ!」
「ちょっ、半ば沈んでるすけど!」
やれやれと二人を見ているダンディーが、港の警備隊をちらりと流し見る。ぴりぴりとした空気を纏い、足早にあちこちを警らしていた。
「フラウさん、大分物々しい様子です」
「そうね、でも戦争が始まる前なんてどこも似たようなものよ」
さらっと事も無げに答える。嵐の前の静けさなどどこにいってしまったものか。
濡れ鼠になったシオンが肩で息をしながら這い上がってきた。
「ねぇシオン、知ってるかしら?」
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