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旅の初心者ならばまず拠点になる宿を確保するのが当然の流れだ。十人居たら九人がそう考えるだろう。
「決めたわ、まずはゆっくり食事ね」
「ではそう致しましょう。シオン君、体を拭きなさい」
十人中の十人にすら入れないキワモノ登場。舌の根が乾かないうちに前言を翻せる人となりのようだ。
「鎧つけたまま海って、大抵死ぬっすよ?」
お約束で頭にワカメをつけてきたシオンに拍手。背中に短い槍を括ってあり、腰にはノーマルな剣。戦いの経験があるのだけは一目でわかる。
「また沈みたくなかったら、あたしの荷物濡らさないでよね」
ガン無視。会話が一方通行なのはいつものことなのか、おしおが商業施設が並んでいそうな場所を遠くに見付けていた。船着き場は広くスペースがとられ、近場には倉庫が優先して並べられるので、多くの場合食事どころなどは離れに置かれていた。
「へいへい。そういやここはどこだっけ?」
「マーラル市ですよ。以前はハイランド王国の都市でしたね」
ちらほらと見掛ける緑色の国旗、変わらずのようで何より。
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