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「おしおさんの出身地ね。ご両親にも挨拶しなきゃ!」
「残念ながら他界して久しいです。妻子は達者のようで、便りが届いていました」
挨拶のくだりをさらりとかわしてのける、大人の会話術が光った。不適切な関係ではございません。
「折角来たんですから、自宅に寄りましょうよ」
だがおしおは口許を小さく吊り上げるだけで返事をしなかった。
――まだあの件を気にしてるのかしら? もう随分と昔の話なんだから、仲直りしたらいいのに。
「うおっ、姐さんあれ!」
「なにっ、なに!」
見ると人が集まっている場所の真ん中で、喧嘩が始まりそうな雰囲気が。喜び勇んで二人は駆け出し野次馬の輪に加わる。
「おしおさんも早く!」
「はい、承知いたしました」
流石に彼は走ることなく輪に向かって行く。港町であれば荒事のいざこざなど、幾らでもお目にかかることが出来る。やるなと言っても無理だ。
小柄なことを生かしてフラウが最前列に躍り出る。これも娯楽の一つとして良いやら悪いやら。
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