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「いや、まあそうなんだがね。使いづらい桟橋だから利用料金が割り引かれてるんだ」
つまりは金を余計に払いたくない、または払えないから必死なんだよ。なーんて裏話を聞かされる、さすが地元ピープル。
「えーっ、じゃあ小銭で喧嘩してるの? うわーはずかシー」
ついうっかり声を大きくしてしまい、水夫に注目されてしまう。
――腕毛メンズはこっちみるな。
「おいそこのガキ、勘違いしてんじゃねーぞ、こいつは面子の問題だ」
「大人の話にくちばし挟んだら痛い目みっぞ!」
馬鹿にされたままでは収まらないと、詫びを入れろと凄んでくるではないか。ではないか。
「あ、ゴメン」
何かがブチッと切れた音がするような気がした。水夫のこめかみには怒りの十字マークが浮かんでいる。
「なめんなよガキが!」
短気な奴がフラウに平手打ちをしようと腕を振りかぶる。そんな勢いで叩かれたら大変。ハーフスイングでも顔が真っ赤に腫れ上がるのは間違いない。
パーン! 気持ちよい位に音が波止場に響く。
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