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……おねえちゃん。きのうもみはりのひとにおこられて、たたかれたよぉ。
……あらまあ、居眠りしちゃったからね。お仕事のあいだは起きてなきゃだめなのよ。
……でも、ねむいんだもん。まいにちあさからよるまでくたくただよ。おねえちゃんはつらくないの?
……私だって疲れるわ。でもがんばったらお小遣いがもらえるでしょう。
……いつもらえるの?わたしいっぱいおしごとしたよ。はじめたのいつだっけ?まだもらえないの?
……さあねえ……もっとがんばったらもらえるわ、きっと。さ、もう寝ましょう。明日も早くから作業場に行かなくちゃね……。
……うん。わたし、とってもねむたい。
……おい。
……わたし、もうねる。おやすみ。
……おいっ。
「おいッ」見張り番に頭をこつんと叩かれて、少女は目を覚ました。
「何回も何回もたたかせるな!いい加減に学習しろよ、寝てたらロクなことないってなぁ!」
「ごめん、なさい……ったあ……」
「次来たときまた寝ててみろ!工場長様にばらしてクビにしてやるぞ!クビに!」
(いや、いっそ、そのほうが……)
「今何て言った?もう一回言ってみろ、このチビ!」
見張り番はしかめっ面のまま巡回を再開したが、その横顔からは明らかな疲労が見て取れた。
少女は腕でまぶたをこすりながらおずおずと作業に戻った。拳を受けた痛みが消えず、無意識に頭の上に手をやった。そして肩まで伸びたぼさぼさの黒髪を指でとかした。
紡績機械が縦横にずらりと並ぶ工場。ここで働く彼女達は、スピナーと呼ばれる仕事をしている。機械に絡んだ糸くずを取り除き、巻き取られる糸が切れていないか一本一本確認していく。切れていたら糸の先を見つけ出して、繋ぎ直さなければならない。最後まで確認し終わったら、最初からもう一度。これを早朝から深夜まで、延々と繰り返すのである。
スピナーはほとんどが若い女性達だ。田舎から出稼ぎに来て、雀の涙ほどの賃金を実家に送って生活の足しにしている。しかし中には、彼女のような子供もいた。親を亡くして行く当てもなく引き取られ、食事以外にろくな賃金も与えられずに、非合法に雇われているのである。
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