プロローグ

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 死ぬ、のか? 俺?  17年間培ってきた様々な思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡る。友達、親友、退屈な学校、窓際の席。そこから見上げた夏の青い空。それらが死んでいく肉体の中でとても鮮明に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返した。  終わっていく。人生の超過時間を理が精算しにきた。  コツ。  響くブーツの足音。彼女は自らの仕事を終えて約束通り俺のもとにやってきた。その瞳は何とも切なく、見ようによっては涙を浮かべていてもおかしくない表情である。  色白の細い指先が俺の頬をなぞり、静かに両の瞼を閉ざした。 「どんな形でも……私はアナタを助ける……見捨てたりしない」  少女の澄んだ声が鼓膜を心地良くくすぐる。  そして、俺の意識は深淵の底へと音もなく……溶けるように堕ちていった。
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