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私の家族は二人、お母さんと私だけ。
だけど、お母さんは基本的に夜中に帰ってくるから、ほとんど一人ぐらしのようなもの。
私を育てるために、無理をして……。
『お前なんていなければ』
不意に浮かび上がった光景。
それを消すように静かな部屋に、くしゃり、紙を丸めたその音が響いた。
イライラする。
何が、イライラするって―――――何も出来ない自分が。
頼ってばかりで、一人じゃ生きていけない。
怒りのせいか、無性に泣きたくなるのを目を閉じてぐっと堪える。
「お風呂入ろうかな」
一旦気持ちを、落ち着かせよう。
くしゃりと丸めた紙をもう一度、広げて綺麗に畳んだ。
それを何するわけでもなく、ゴミ箱に入れる。
はぁと吐いた呼吸の音がやけに聞こえて部屋の静かさを改めて感じた。
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