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兄の夏生もまた満面の笑顔だ。 妹の同級生と付き合っていながら、そのだらしなくメロメロに崩れた顔。 見てるこっちが恥ずかしいわ。 「秋乃、何か飲み物持って来てくれ。」 ……はぁ? 「あ、かまわないで、秋ちゃん。」 はぁ? 『秋ちゃん』? 私達そんな親しい間柄でしたっけ? 「あ、正ちゃんはコーヒー飲めないからな!」 「ホントに御気遣いなく。」 そう言いながら二人は長い廊下を歩いて行った。 「…水でいいかな…」 水道水で。 兄と言っても実は腹違い。 夏生と私は義理の兄妹だ。 私達の父親はちょっと大きな会社の社長で。 私はいわゆるお妾さんの子供だ。 いろいろな事情があって、今、私は兄のいる本宅で暮らしている。 純和風建築の豪邸。 かなりの豪邸。 でも中松 正はちっとも驚いた素振りを見せなかった。 来た事があるんだな。 私の知らない間に…。
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